風来の万博小娘

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    「あそこに懐かしいものがあるでしょう」

     とピアノマンが肩を揺する。


    「あら珍しいステレオ。あれ鳴んの?」

     順子さんが目を丸くして尋ねる。


    「ええ、ノイズがすごいですけど鳴ることは鳴ります。これも雅也がレコードを全てパソコンにうつしてノイズをとってくれまして、綺麗な音で懐かしい曲を聴いてますわ」

    「へー、なんでもパソコンで出来るようになってほんまに便利な世の中ですね。私ら時代遅れの人間は驚かされるばかりですわ」

     と石川先生は頭をかいた。


    「ほんまにそうですわ。ビデオかて、昔撮ったテープ式のものを雅也が全てCDとか言うものにしてくれて、パソコンでさっと映りますしね」

     そこまで言ってピアノマンは「雅也、雅也」とかすれ声を上げた。

     雅也君が一階から音もなく現れる。

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    「お若いから、雅也君パソコンにお詳しいんでしょう」

     順子さんの言葉にピアノマンは笑みをつくった。


    「ええ、学生の時には何かの資格を取ったようです。私にはわかりませんが」

    「この方はガバチャさんってみんなから呼ばれてるんですけど、パソコンに詳しくてね、あたしも今年七十三になるんですけどインターネット始めたんですわ」


    「いや、僕はぜんぜん雅也君にはかないませんわ。若い人は新しい事に機敏について行けますのでね。きっと雅也君にいろいろと教えてもらわないといけないぐらいですよ」

     そう言って顔を振ると、石川先生が部屋の隅に目をとめていた。


     おびただしいレコードが積み上げられている。


     古い家具に囲まれて気がつかなかったのだが、その横には大型のステレオもある。

     昭和四十年代後半に流行った型だ。

    世界各地の膨大なレコードコレクションをチェックしよう

     石川先生が口をはさんだ。

    「あの、ピアノマンさんもブログかなんかされているんですか?」

     ピアノマンは明るい表情をつくると

    「雅也に七十の手習いで教えてもらってます。最近はこれ一つでいろいろな買い物も出来るので助かってます」

     と答えた。


      この家ではパソコンは必需品なのだろう。

     年老いた車椅子の父と息子の二人暮らしでは、食事も思うようにならないはずだ。


     今時は日用雑貨だけでなく給食までインターネットで申し込めば配達してもらえるし、庭の手入れなども業者に申し込めばよい。


     そうしなければ、この二人は自分たちの生活を維持することは出来ないのだろう。

     あのうら若い物静かな青年が、働きながら父の面倒を見ているとは思えなかった。

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