おばあさんは三人がうなずくのをしっかり確認すると、よっこらせぇ、と言いながら部屋の中なのに杖をついて立ち上がった。
 少しよろける感じで背中を向けると奥の間に消えていった。

 足の調子が悪いのか片方の足の先を畳みにこするような歩き方だ。
 おばあさんは、直ぐに手にお菓子の紙箱のようなものを持って戻ってきた。
 ぎこちない動作でヒロムらのかたわらにゆっくり座ると、紙箱をそっと置いた。

 間近で見るおばあさんは、数え切れないほどのシワと薄茶色の模様が顔にあった。
 日にあたった手は意外に白かったが、乾いた皮を引っ張るような感じで手の骨が突っ張り、やはり薄茶色の模様が無数についていた。

 おばあさんは何やら変わった匂いがする。
 それは何の匂いかと聞かれると答えることは出来ないが、いつかどこかで嗅いだ覚えのある匂いで、決して嫌な匂いではなかった。

 紙箱をよく見ると、蓋から食べ物を包むナイロンのラップが飛び出ていた。
 ヒロムはラップに包まれた白いショートケーキを想像した。おばあさんは小刻みに震える手で、箱の蓋をゆっくりと取った

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