サルは素早くにんじんを拾い上げると、道の脇に移動し首を傾げてニンジンをかいだ。
 舌を出して二、三度舐めると、歯をむき出してニンジンにかじりついた。
 ぺっぺっ。直ぐに顔をしかめ吐き出す。口に合わないようだ。

 三人は爆笑した
 トシヤンが石を投げつけてサルの親子を追い払った。
 親ザルはニンジンを捨てて森の中へと逃げていった。

 再び進み始めた三人だが、何やら後ろから物音がする。見るとさっきの親ザルが小ザルを胸にぶら下げ、後をついてきていた。
 いいやほっとこう、とトシヤンはサルにかまわず足を早めた。

 暫く進むと道が二手に分かれていた。ナオボウが右と言った。進んでいくと森が切れていきなり住宅街に出た。

「お前まちがえたんとちがうんか」

 トシヤンが立ち止まる。ナオボウが便箋の地図に目を落とした。ヒロムも地図を覗き込む。

「間違ってる、反対やんか」

 トシヤンがナオボウの頭に軽くげんこつを落とした。
 ナオボウは今にも泣き出しそうな顔だ。

 引き返そうとすると呼び止める声がした。振り返るとランドセルを背負った大柄の二人組がいた。

 ヒロムには見覚えのある顔だった。いつか、校庭の裏庭で下級生を虐めていた二人組に違いなかった。

 トシヤンが小声で「四年のワルや」と言って眉を潜めた。
 二人組はにやにやしながら近づいてきた。

「お前らこんなところで何してるんや」

 トシヤンも大きいが、四年生はまだ更に大きかった。ヒロムとナオボウは怖くて黙ってしまった。
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