見ると、一人の肩には親ザルが、もう一人の肩には小ザルが飛び乗っている。

 二人は、歯をむき出したサルに顔を引っ掻かれていた。

 さっきの親子ザルだ。

 ぎゃーっ! 悲鳴を上げながら二人組は逃げてしまった。

「今のうちや」

 トシヤンが言うと、ヒロムはぼた餅の箱を抱えて駆けだした。

 三人はもと来た道の方へ全速力で走り続けた

 おいこっちや、とトシヤンがさっき反対に進んだ二またの所で腕を振る。ヒロムとナオボウはその方向に必至で走った。

 どのくらい走っただろう。
 いつの間にか森はすっかり深くなっていた。

「も、もう大丈夫や」

 トシヤンが息を切らせて地面にへたり込んだ。

 ヒロムとナオボウも肩で息をしながら地べたに腰を下ろした。三人とも暫く口がきけなかった。

 深い森の中で鳥のさえずりだけがチュンチュンと聞こえている。

 見上げると大きな葉っぱの裏側が一面に見えた。

 所々揺れているところに茶色の鳥がいる。

 鳥が動くたびに、葉っぱの隙間から日光が差し込んできた

 ヒロムは眼を細めると、柔らかな草の上に大の字に寝そべった。

 さっきの嫌な出来事が、青々しい草の匂いに消されていくような感じがした
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