翌日、メッセージでのやりとりをすることになった。


 僕の予想どおり、ピアノマンは電話番号を数字ではなくひらがなで伝えてきた。

 アメブロは電話番号の表示を禁止している。

 その抜け道として、若い者の間では番号をひらがな表示で伝え合っている。

 

 僕は、ヘンリーの開店前に順子さん、石川先生、ヤスコさんの三人を集めた。

 電話番号を伝えると順子さんはすぐさま携帯をバックから取り出した。


 その携帯を石川先生が素早く奪い取る。みんなに会話が聞こえるように通話音を上げる設定をしたようだ。

 再び携帯を手にした順子さんは、顔を近づけ食い入るように番号を押した。


「もしもし、ピアノマンさんですか」

 順子さんの声が上ずる。

「あっ、そうですが。もしかしてじゅんちゃんですか」

 ピアノマンの声はかすれてかなり高齢だ。


「い、いつもコメントくれてありがとう」

「いえ、まあ、歌がすごく上手で動画を何回も見てますよ」

 順子さんは目を輝かせて僕らを見回した。


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