順子さんが吸い寄せられるように歩み始める。


「まあ、あやしいやつじゃなさそうですね」

 僕の言葉を無視したように、石川先生は順子さんの後を追った。

 僕と石川先生は遠方から何気なく三人の様子をうかがった。


 T字路の突き当たりで、車いすの老人と順子さんが笑顔で挨拶を交わしている。

 車いすに手をかけた青年は、硬い表情のままうつむいていた。


 やがて青年が車いすの方向を変えると、順子さんが寄り添うようにしてT字路の山側に消えていった。


 僕と石川先生が早足で駆け出す。

 T字路から山側を除くと三人は、白い大きな家の門をくぐろうとしていた。


「でかい家やなあ」

 石川先生が見上げる。

 よほどの資産家に違いない。


 しばらくすると順子さんら三人は二階のバルコニーに姿を現した。

 談笑しながら老人が海側を指さしている。


 何を話しているのか、順子さんが手を合わせて大笑いしている。


「ほんまにのんきなおばはんやで」

 石川先生は額の汗をハンカチでぬぐった。

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