「私の動画見て思い出されたんやね」

 順子さんが目を潤ませる。

 はい、とだけ返事をすると、ピアノマンは急に口を結んでコーヒーを置いた。


 その表情は何か言いたいことをこらえているようにも見える。

 沈黙の中、青年が小さな会釈をして一階に消えていった。


 庭の木で小鳥がチッチッとじゃれ合って飛び去っていく。


「ここはいろいろな鳥が来て楽しめます」

 ピアノマンはコーヒーカップに視線を止めたまま独り言のようにつぶやいた。

 僕らはじっと黙って窓外に目を移した。

 生ぬるい風が頬をなでる。


「雅也はほんとに優しい子でしてね」

 ピアノマンの声が妙に透き通って聞こえた。


「ほんまに優しそうな顔してはるもんねえ。あたしもあんな子が欲しいわ」

 何気ない順子さんの言葉に、ピアノマンは短く微笑むと視線を落とした。


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