「なんやドメインやらホームページの更新代やら言うてて、ただホームページもいっこも更新されてないし、ほんまに一万円も払わなあかんのやろか思うてしばらく振り込んでないんよ」
順子さんは立ち上がると、僕の隣に座った。
石川先生は語気を強め、口元だけで笑顔を作った。
順子さんは立ち上がると、僕の隣に座った。
「騙されてたんやって」
石川先生の言葉に順子さんはため息をついた。「どないしたらええんやろかねえ?」
ヤスコさんが、僕の顔をのぞき込む。「契約書も交わしてないんやったら、ほっといたらいいんじゃないですか」
僕が言うと、「お客さんの言うとおりや」と、石川先生は水割りを勢いよく空けた。「せやけど三〇万円もかけてせっかくつくってもうたホームページが止めになったらもったいないやんか」
順子さんが言い終えるが早いか、「ほとんど見られてないって。ぜんぜん客増えてえへんやんか」石川先生は語気を強め、口元だけで笑顔を作った。
「三十万って高すぎですよ。なんなら僕が今晩ただのホームページつくっといてあげますから、それと見比べてみてください」
順子さんは目を丸くして何度も頷いた。何もわからないお年寄りを騙してお金を巻き上げるのは簡単なことだ。先方は同じ手口で複数の振込額を手にしていることだろう。